デジタルを駆使した仕事と働き方–DXが定着した企業の要件(その1)

今回は「デジタルを駆使した仕事と働き方–DXが定着した企業の要件(その1)」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 デジタルトランスフォーメーション(DX)が定着した企業の姿となるための要件の一つが、デジタルを駆使した仕事と働き方を実現することです。今後、業務の量と質の両面を改善していくためには、デジタルを前提に業務プロセスや働き方をデザインすることが求められます。

 前回は、DXの活動や新しい取り組みが全社に広がり、その成果が維持されるためには5つの要件が必要であると述べました。今回はその1つ目として「デジタルを駆使した仕事と働き方」について考えていきます。

 DXが推進され、デジタルが進展すると私たちの仕事や働き方はどのように変わっていくのでしょうか。企業の業務には、新しい製品やサービス、ビジネスモデル、顧客体験、需要を生み出すような「付加価値業務」と、その価値を確実に生産したり、届けたり、それらを管理したりする「オペレーション業務」があります。

 まずは、オペレーション業務に費やす時間を低減し、付加価値業務に振り向けることで、その時間比率を高める必要があります。多くの企業において、現在の業務量は圧倒的にオペレーション業務に費やされています。デジタル化の時代には、オペレーション業務のほとんど全てが、画像認識などを含む人工知能(AI)、ソフトウェアロボット(ロボティックプロセスオートメーション、RPA)、ハードウェアロボット(ロボットアームや自動倉庫など)によって代替されます。手書きや紙ベースの書類、手作業、目視、対面など、物理的な業務をデジタル技術によって置き換え、電子化、仮想化、自動化します。

 また、反復的な作業や事前に手順をプログラム化できる仕事だけでなく、経験を要する仕事や複数の要素を組み合わせて判断しなければならないような、現場における日常の小さな意思決定業務もその対象となります。デジタル化を進展させることによって、人が行っていたオペレーション業務をテクノロジーに代替させ、その人的余力を付加価値業務にシフトさせることがポイントです。

 今後、オペレーション業務と付加価値業務のどちらかを問わず、新しい業務プロセスを検討する際には、AIやRPAがその一翼を担うことを前提に設計しなければなりません。

 次のステップとして業務量の配分を変えるだけでなく、オペレーション業務と付加価値業務の両方において、業務の質を高め、同じ業務量で生み出すアウトプットを増大させることが求められます。

 まず、オペレーション業務は処理や作業がスピードアップするだけでなく、データがデジタル化され可視化されることで、ミスが減り、業務の品質や意思決定の精度が上がります。そして、付加価値業務の質も高めていかなければなりません。デジタルを活用した創造的な活動を促進するためには、創造的なアイデアが生まれやすい、協調的な作業を行いやすい、データや情報を高度に分析・活用しやすいといった環境を整えることが求められます(図1)。

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって在宅勤務や出社制限が推奨されたことを受けて、多くの企業がテレワーク環境の整備を進めたことは、DXの推進において追い風となった部分はあると考えられます。しかし、ここで注意しなければならない点があります。それは、一部の企業経営者が「DX=テレワークの推進」と思い込んでしまったことです。テレワークは確かにデジタル化への取り組みではありますが、それはDXの全体像のごく一部の要素に過ぎません。

 これまでも多くの企業がペーパーレス化、テレビ会議の導入、フリーアドレスの実施、電話のIP化、コミュニケーション活性化のためのグループウェアや社内SNSの展開など、働き方やその環境を見直すプロジェクトを推進してきました。しかし、それだけで本当に働き方が変わったのでしょうか。

 一般に「将来の働き方」というと、人事部門が主導する在宅勤務やフレックスタイムなどの就労形態に関わる制度面の取り組みや、IT部門が推進するモバイルワークやリモート会議などのワークスタイル革新に関する取り組みが想起されがちです。しかし、働き方について掘り下げていくと、労働と報酬の関係、「雇用」という概念、「会社」という枠組みといった、より根源的な議論に立ち返らなければならない場面にぶつかります。再考すべき点は多岐にわたり、働く場所、組織の在り方、意思疎通や合意形成の在り方、指揮命令および報告の方法、意思決定の方法など、多方面から検討しなければなりません。

 何のために会議をするのか、伝達手段は電話や電子メールが最適なのか、報酬は労働時間に対して支払われるべきか、上司と部下という関係は本当に必要なのかといった、これまでの常識に疑問を持つような発想が求められます。このような根源的な課題に向き合いながら変革を推進していくのが、DXにおける働き方改革の本質です(図2)。

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