現場経験と機械学習を組み合わせた航空機の「予知整備」に挑むANA
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全日本空輸(ANA)は、過酷な環境で運用する航空機の整備において、定時性の向上やコスト抑制を目的として、整備現場の豊富な知識や経験と機械学習技術を組み合わせた「予知整備」に挑戦している。同社に取り組みを聞いた。
ANA 整備センター 部品事業室 装備品整備部でアビオニクス(航空機の電子システム)を担当する重冨貞成氏は、航空会社の整備部門にとって最大の使命は、航空機の利用客に安心と安全、快適性を提供することだと話す。整備部門は、航空機メーカーや部品メーカーから提供される整備マニュアルに基づいて、日々の航空機の整備を行っている。
現代の航空機は、飛行中に万一故障が発生しても安全に着陸する設計が徹底されている。ただ、海外の空港など整備拠点から離れた場所で故障が発生した場合は、現地への整備士の追加派遣や部品、工具などの手配だけでも長い時間がかかり、修理作業が大規模になれば、運航ダイヤへの影響やコストが大きくなる恐れがある。遅延や欠航といった航空機のダウンタイムにつながる故障発生などを可能な限り削減することが整備部門の大きな目標の1つだ。
整備の観点から航空機のダウンタイムを減らすアプローチの1つは、機体を構成するさまざまな機器やシステムの故障を未然に防ぐ予防保全になる。重冨氏によれば、航空機は電子化が進み、現在では機体に搭載されるさまざまなセンサーからの多種多様なデータを取得できるようになった。これらのデータを活用し、整備部門が持つ豊富な知識や経験、技術力を組み合わせることで予防保全を実現していける。同社では、これを独自に「予知整備」と呼んでいる。
整備の現場には、日々運航データや整備記録などの膨大なデータが蓄積され、機体の構造や挙動、乗務員の操作手順といったことに精通する多くの整備士が活躍している。そうした環境の基で取り組む「予知整備」の1つとして、重冨氏らのチームでは、米MathWorksの数値解析ソフトウェア「MATLAB」を利用して、膨大なデータと機械学習から故障の兆候を把握するためのアルゴリズムを開発し、点検整備に生かすことに挑戦している。
今回重冨氏が紹介してくれた取り組みは、米Boeingの787型機(B787)の空調システムで、外気を取り込んで圧縮する「Cabin Air Compressor」(CAC)という装置の「予知整備」になる。