DXに向けた組織体制の整備–DX推進組織の立ち上げとその後の進化
今回は「DXに向けた組織体制の整備–DX推進組織の立ち上げとその後の進化」についてご紹介します。
関連ワード (デジタルジャーニーの歩き方、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)のアイデアを出し、それを実現していくためには、DXを推進する組織体制が必要となります。また、DX推進のための環境を整備し、社内の各種制度やプロセスを変革していくためにも、それをけん引する組織が重要な要素となります。
前回では、DX推進組織の形態について3つのパターンを紹介しましたが、DXを推進する組織に求められる役割と活動とはどのようなものでしょうか。いずれの組織形態においても、DX推進組織には、「調査・研究」「提案・推進・支援」「社内環境整備」の3つの活動が必要と考えられます(図1)。
DXの推進を担う組織には、調査研究(R&D)の役割が期待されます。先進事例、技術動向、市場動向などITやデジタル技術に関する調査研究だけでなく、自社が所属している業界の動向、社会・産業全般の動向、市場や顧客の動向などの幅広い分野に対してアンテナを張り巡らせることが求められます。
具体的なDX推進の中心となる活動であり、この組織が能動的に社内に働きかけるものです。ビジネスにおけるデジタル技術の適用可能な分野を模索したり、事業部門の課題やニーズを拾い上げて、ビジネス現場に提案したりすることも考えられます。ベンチャー企業との協業やITベンダーとの概念実証(PoC)の実施など、外部との連携を促進することも有効な活動といえます。
また、事業部門が主体となる施策では、調査研究活動の結果を基にベンダーや技術の選定において専門家としてのアドバイスを提供したり、技術的または人的な支援をしたりすることも重要な任務となります。調査研究活動で得た知見をもとに、経営者や事業部門に対して啓発的な情報発信を行ったり、教育・研修を実施したりすることも重要な役割です。
多くの企業では、DX推進のための環境が十分に整っているとは言い難い状況です。DXを円滑に推進するためには、社内のリソース(ヒト、モノ、カネ)を確保し、動かしていかなければなりませんが、そのための制度や体制が確立していない場合は、それを変革しながらDXを推し進めていく必要があります。また、DX人材の確保と育成は重要な課題となりますが、DX推進組織内の人材だけでなく、会社全体のデジタルリテラシーの向上も重要なテーマとなります。
もちろん、全ての活動を短期間で立ち上げることは困難ですので、初期段階にはこれらのどの活動を中心に据えるかを明確にすることが推奨されます。
昨今では、DX推進のための専門組織を設置する例も増えていますが、組織は生き物ともいわれますので、DXの環境整備の成熟度や施策の進行状況に応じて組織体制を進化させていくことが求められます(図2)。
まず、DX推進のための組織がどこにも設置されていない場合、各事業部門などで個別にDXへの取り組みが開始されます。こうした状況では互いの連携や相乗効果は期待できず、同じようなことにバラバラに取り組むために、重複投資や同じ失敗の繰り返しといった問題が生じます。
こうした問題を解消するには、組織横断的なDX推進組織を設置して人材やノウハウを集約することが必要となります。そして、事業部門が個別に取り組んでいたDX施策の一部を推進組織が巻き取り、事業部門と連携したり推進組織が主体となって遂行したりします。この形態のままでDX推進組織が中心となって継続的にDXを主体的に推進したり、支援したりするのも1つの考え方です。
しかし、DXへの取り組みが活発化してくると、現場に近い事業部門でのDX施策が増加し、案件によっては事業部門主体で推進する方が、スピード感を持って進められる場面が多くなります。そのような場合は、DX施策の推進主体は事業部門側に移管し、横断的なDX推進組織は事業部門の後方支援や環境整備に軸足を置くと良いでしょう。
最終的に、全社の誰もが組織や役割を意識することなく、日常的にDXが推進されるような状態を目指すとすれば、各事業部門内の推進チームが部門内の活動を取りまとめ、プロジェクト管理を実施することになります。一方、横断的なDX推進組織は全社的な視点からノウハウを集積し、必要に応じて技術的、専門的な支援を行うコンピテンスセンターのような役割を担うこととなります。