「最大の強みはエッジと開発者への注力」–日本の拡大戦略を掲げるFastlyのCEO

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 コンテンツ配信ネットワーク(CDN)の米Fastlyで最高経営責任者(CEO)を務めるTodd Nightingale氏は、競合との差別化ポイントに「われわれはエッジと開発者に注力しており、顧客の求めるものを統合された単一のプラットフォームで提供できる点にある」と述べる。同氏にビジネス戦略や日本市場に対する取り組みなどについて話を聞いた。

 Fastlyは、CDN、エッジコンピューティング、オブザーバビリティ(可観測性)、セキュリティの4つを中核として、総容量313Tbps(2023年12月末時点)というバックボーンインフラを生かした高速の応答性に優れたサービスを提供している。Nightingale氏は、前職のCisco Systemsでエグゼクティブバイスプレジデント ゼネラルマネージャーを務めるなどネットワークやサイバーセキュリティの企業で要職を歴任し、2022年に現職に就任した。

 まず同社の基本戦略としてNightingale氏は、プラットフォーム戦略とGo-to-Market戦略の2つを挙げ、「一つはより優れたデジタルとユーザーの体験を実現する完全なエッジプラットフォームの構築であり、もう1つは成長性が高い市場への注力になり、日本は最も有望な市場と位置付けている」と話す。

 CDN各社の中でFastlyは、特にネットワークの高速の応答性、低遅延性に優れたパフォーマンスが評価され、これらへのニーズが強いゲームやエンターテインメント、ECといった業界の顧客を多数獲得してきた。しかしNightingale氏は、「市場ではCDNベンダーと思われているが、実際には10年前からオブザーバビリティやセキュリティを含むエッジプラットフォームを構築している。CDN、エッジ、オブザーバビリティ、セキュリティをそれぞれ獲得して個別に提供するのではなく、完全に統一されたプラットフォームに構築し、提供することができる」と強調する。

 さらに、「われわれのユーザーは、プラットフォームエンジニアとアプリケーション開発者になる。われわれを毎日利用する顧客のためにプログラマブルなソリューションを実現しており、競合よりもはるかにプログラマブルであり、完全な自動化を可能にする。リカバリーとレジリエンスの信頼性を担保し、顧客のウェブ資産に対して最高の可視性と分析性、リアルタイムなシステムのオブザービリティを提供することができる」とアピールする。

 こうした中で近年は、同社サービスの利用目的や顧客層に変化が生じているという。利用目的では、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)や不正ボット対策、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃対策などのセキュリティ機能と、エッジアプリケーションのオブザービリティ機能への引き合いが拡大しているといい、これはクラウドにアプリケーションを展開する企業の増加が背景にある。顧客層では、先述のネットワーク性能を特に重視する業界に加えて、ITなどのハイテクや大企業のユーザーが増えており、特に日本市場と米国西海岸で顕著だという。

 同社が中核と位置付けるCDN、エッジ、オブザーバビリティ、セキュリティは、CDNの競合だけでなくクラウドのハイパースケーラー各社も注力領域として打ち出している。再度Nightingale氏に具体的な差別化ポイントを尋ねると、次のように説明した。

 「例えば、オブザーバビリティ領域でDatadogやNew Relic、Splunkといった専業各社と競争しているわけではない。われわれが存在しているのは、(CDNなどの同社ユーザーにとっての顧客の)最も近いエッジであり、エッジで何が起きているかがすぐに分かる。ユーザー体験に何か支障があれば、リアルタイムにオブザーバビリティへ通知され、瞬時復旧を実行する。同様に低遅延やダウンロード、配信、プライベートアクセストークンといった極めて高いパフォーマンスやセキュリティを必要とする顧客の期待に応えている」

 Nightingale氏によれば、日本でも既存の顧客層や拡大しているテクノロジー、大手企業からエッジ、セキュリティ、オブザーバビリティへの引き合いが強いという。改めて同氏は、10年前から構築と整備を進めてきた同社のプラットフォームが差別化のポイントであり、多様なサービスを統合的に提供できるアーキテクチャーが最大の優位性になると説明する。

 直近では6月に、生成AIなどの利用拡大に対応する「Fastly AI Accelerator」を加えている。まずOpenAIの「ChatGPT」に最適化しているといい、過去のクエリーを分析して類似クエリーに対してはFastlyのエッジで応答するセマンティックキャッシュを行うことで、大規模言語モデル(LLM)へのコール数やコストを削減することができるという。

 日本でのビジネスは、2023年9月にカントリー・マネージャーに就任した今野芳弘氏の体制のもと、計画を上回るペースで進捗(しんちょく)しているといい、Nightingale氏は今後も日本への投資を強化していくと述べる。

 「特に直近の6カ月(2024年1~6月期)は、今野(今野芳弘氏)を中心とする日本チームの活躍によって日本のビジネスが非常に好調に推移しており、(ハイテクや大手などの)新しい顧客を獲得することができている。われわれにとって日本市場はとても有望であり、日本チームの拡充、製品の日本語化、日本でのサポート提供といった日本への対応を引き続き推進し、日本におけるリーディングエッジプロバイダーになる」

 また、為替変動に伴うITサービスコストの上昇が日本企業のITコストを圧迫している状況への対応についても聞くと、「できるだけ市場に適応するように努めており、顧客が拡大している日本市場も同様になる。為替変動が常に問題となるが、円建てで取引している日本の顧客も多く、為替の変動を心配される必要はない。われわれは適正な価格で顧客に最大限の価値を提供することに取り組み、為替の変動が生じても常に顧客を第一に考えている」とした。

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