日本海側に豪雪をもたらすJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の実態を洋上気球観測で初めて解明
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水産大学校練習船「耕洋丸」による洋上気球観測の様子
新潟大学は2月21日、日本に豪雪をもたらす日本海寒帯気団収束帯(JPCZ。Japan sea Polar air mass Convergence Zone)の実態を、洋上気球観測によって初めて明らかにしたことを発表した。
JPCZは日本海で発生し、朝鮮半島の付け根付近から日本列島にかけて数百kmに及ぶ帯状の雲を形成する(冬の北西季節風がシベリアから吹くと、北朝鮮北部の白頭山の下流に位置する日本海北西部から日本列島まで帯状の太い雲が伸びる)。これが上陸すると、狭い範囲に極端な豪雪をもたらし、ときには太平洋側に大雪を降らせることもある。JPCZの発生のメカニズムやその詳しい実態は、これまで現地観測されたことがなかったため、その構造は謎だった。
JPCZの発生メカニズムとしては、北朝鮮の山を迂回する気流が合流することで発生するなどいくつか提唱されているものの、現場での観測研究は実施されていないため確かめられていなかったという。
そこで、新潟大学、三重大学、水産大学校、東京大学からなる研究グループは、2022年1月19日から20日かけて、水産大学校の練習船「耕洋丸」を使い、JPCZ下の洋上を横断しながら気球による観測を実施した。気温・湿度・風・気圧を測定する機器を搭載した気球を1時間ごとに打ち上げ、これに合わせて海洋の温度塩分観測も行った。
洋上観測の模式図。JPCZを横断しながら気温・湿度・風・気圧を測定する機器を搭載した気球を1時間ごとに打ち上げ、上空の大気を観測
その結果わかったのは、JPCZの中心部では、風向が90度に激変し、強風化し、周囲から気流が収束しているという事実だった。収束域は幅約15kmときわめて狭く、上空4kmまで風の急変域が続き、6kmの地点では気流が発散していた。こうした大気の急変は、規模数百kmの前線帯でも見られないという。またJPCZ中心部の雲の高さは、平均的な雪雲の高さが2kmなのに対して4kmもあった。
JPCZ中心部を横切った島根県沖での観測結果。矢印は1000m上空の風向と風速を示す。JPCZ中心部で風向が約90度変化し、周囲から高湿度の気流が収束することで、JPCZに集中し大雪がもたらされていることを観測
このときの海水温度は、暖かい対馬暖流の影響で14度。気温は3度。その温度差は11度。水面での風速は毎秒17m。これらにより海面から大量の水蒸気が吸い上げられ、気流の収束によりJPCZに集中して大雪を降らせていた。これを降雪に換算すると、1日の降雪量2mに相当するという。こうした大気と海洋の状態により極端な大雪がもたらされることが、今回の観測によって初めて示された。この観測結果は、JPCZの予報の精度向上に寄与すると、研究グループは話している。