DX戦略を目標に落とし込む–DXの目標と部門目標のひも付け
今回は「DX戦略を目標に落とし込む–DXの目標と部門目標のひも付け」についてご紹介します。
関連ワード (デジタルジャーニーの歩き方、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
デジタル変革(DX)のビジョンと戦略が決まったら、全社的な目標を設定します。目標設定では、DX戦略で示した重点領域ごとに、目標をその時期とともに明示しますが、このDX目標と部門や個人の目標の関係を明確にするのがポイントです。
前回は、DXビジョンとDX戦略の位置づけと、その策定方法を解説しました。次は、これらを基に全社的なDXの目標を設定します。今回はその必要性と進め方について考えていきますが、まずは目標・KPI(重要業績評価指標)の明確化と周知の部分をジャーニーマップで示します(図1)。
DX戦略の立案においては、経営ビジョンを支える幾つかの重点領域ごとにDX戦略がひも付くように設定することを推奨しました。そのため、DX戦略にも幾つかの重点領域があるはずです。例えば、DX戦略の1つに「生産DX」という重点領域が挙げられているとすれば、それを一段分解し、どのような目標を達成すれば生産DXが実現できるのかを考えていきます。
これにより「リードタイムの短縮」や「生産工程の最適化」といった具体的なテーマが見えてくるはずです。そして、そのテーマごとに、DXによって目指すべき姿、達成すべき目標(KPI)を、その時期とともに明示することが求められます。またDXを、各部門や個人が自分事として取り組むためには、全社的なDXの目標と部門・個人の目標の関係性を明確にひも付けることが重要です。
DX推進部門以外の一般の部門や個人は、現行の仕事を抱えており、従来の部門目標や個人目標に向かって努力しているはずです。経営者やDX推進部門がいかにDXビジョンとDX戦略を掲げ、DXで達成すべき目標を明示したとしても、経営ビジョンや事業戦略とひも付いていなかったり、部門目標や個人目標にそれが盛り込まれていなかったりすれば、DXを自分事として取り組む動機づけにはなりません。DX施策の実行において事業部門の協力が得られないといった問題は、こうした状況から生まれているといえます。
DXの目標が公式に部門や個人の目標に組み込まれており、各部門や個人がDXに関する取り組みにおいて果たすべき役割やなすべき行動を正しく理解できるようにすることが重要です。そのためには、部門の業績評価指標や個人目標の管理方式、評価項目の見直しが必要になる場合もあるでしょう。
DX戦略を各部門が主体性を持って取り組むためには、DX戦略を一段掘り下げたDX目標に落とし込み、それらに対する各部門の役割や目標を明確に結びつける必要があります。さらに、部門目標が個人目標とひも付くことで、一人一人の活動や行動がDX目標にどのように貢献できるのかが明確になります。
具体的な方法を見ていきましょう。図2の例で示すように4つのDX戦略の1つである「生産DX」では、「デジタル化による生産とサプライチェーンの革新」が掲げられています。しかし、このような定性的な表現だけでは具体的に何をどう変革すれば良いか分かりません。そこで、この生産DXを実現するために「調達リードタイムの短縮」や「生産工程の最適化」のような幾つかの具体的な対象領域や実施事項に落とし込む必要があります。
具体的な対象領域や実施事項に落とし込むことができれば、それに対応する部門や業務を特定することができるはずです。例えば、調達リードタイムの短縮を実現するためには、調達部門と設計部門が協力して、業務プロセスを変革するなどの具体的施策が必要となります。このようにして、全てのDX戦略をDX目標に落とし込み、それを対象となる部門や個人の目標と結びつけます。そうすることにより、各部門と各個人が、DX戦略とどのような関わりを持ち、どのような貢献を果たすことできるのかが明確になります。また、自分の業務の一環として、公式に取り組むことができ、モチベーションを高めることにつながります。