DXは強みを増幅–経産省の中心人物が語る「DXレポート」に潜む危機感の正体
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レガシーシステムを放置したままではデジタル時代の波に乗り遅れる。2025年までに毎年12兆円の経済損失をもたらす――。2018年9月に発表された経済産業省の「DXレポート」は国内のIT業界やIT部門に衝撃を与えた。2022年7月に最新版「DXレポート 2.2」が公表される予定だ。
DXレポート策定の中心人物である同省 商務情報政策局 情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長 和泉憲明氏は、5月に開かれたイベント「Okta City Tour Tokyo」に登壇、「デジタル時代の企業競争力強化とDX推進に関する政策展開 DXレポートの最新版(2.2)と国内外動向を交えて」と題して講演した。
デジタル人材が担う役割について、和泉氏は「デジタル変革を実現すべき競争戦略は、よりよくするためのベターか、新しいビジネスモデル競争戦略に出るディファレントかの二つ」と主張した。
和泉氏はデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の現状と課題について、「デジタル時代のビジネスはよい製品やサービスを作れば売れる時代ではない」と述べながら、グローバル化を視野に含めたインターネットにスケールするビジネスの設計が必要だと捉えている。
他方でDXがよくも悪くもコモディティー化していると述べつつ、「DXは自社の強みを増幅するためのデジタル技術であるはず」と主張。自社強化の投資判断と数値的指標の増減に基づいた経営判断が衝突し、経営の本質に関する議論が先送りだと指摘する。
DXレポートで注目を集めた「2025年の崖」について和泉氏は「結果的には危機感を醸成しながら、(企業の)内部留保を投資に向けて社会を変えたかった」と振り返る。だが、コロナ禍も相まってDXは進まなかった。
「DX推進政策は第2幕。われわれは『北斗七星アプローチ』と呼んでいる。向かうべき方向は不明確に理解しているが、技術の変化によってゴールが変化する。あたかも水面を悠々と泳ぐ白鳥のように水面下で水を漕げるような事例も集めつつ、『デジタル産業宣言』を策定した」(和泉氏)
デジタル産業宣言は「ビジョン駆動」「価値重視」「オープンマインド」「継続的な挑戦」「経営者中心」の5項目で構成される。
そのためにはインフラストラクチャーとデータ連携の高度化が必要だと和泉氏は語る。「クラウド化を見据えたインフラ要件を議論する前に、刷新の目的を明確にすべきだ。従来同様の業務効率化なのか、コスト効率化なのか、DX推進なのか。その上で強化すべき企業競争力を最終イメージから逆算し、目の前の選択肢は適切であるか問うべき」
和泉氏はインフラ要件の明確化はサービス競争力の是非で確認していくことを推奨した。データ連携についてもIDによるシステム横断の分析環境を薦めつつ、「横串で企業競争力を強化できる部分を可視化していく」と述べた。
DXレポート2.xに対して経済産業省は、ビジネスの価値を積算コストで評価する既存産業を「一階の産業」、データを活用したビジネスを目指した「二階の産業」と定義、業界横断型のつながりやバリューチェーン(価値連鎖)型の構造が欠かせないと主張する。クリエイター構造になぞらえながら、「世界観が優先される組織構造ではなく、アクセスや課金状況をリアルタイムでデータ化し、才能や感性ではなくデータで評価すべき」(和泉氏)と方向性を語った。