ストレージの歴史的転換点はいつ?–ピュア・ストレージの創業者が語る技術の営み

今回は「ストレージの歴史的転換点はいつ?–ピュア・ストレージの創業者が語る技術の営み」についてご紹介します。

関連ワード (ストレージ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「ディスクベースのストレージの時代は終わり、フラッシュになると信じていた」――そんな信念のもとに、2009年にオールフラッシュストレージベンダーのPure Storageを創業したのが、John ‘Coz’ Colgrove氏だ。現在も最高ビジョナリー責任者として同社を率いるColgrove氏に、市場トレンドがフラッシュストレージへと塗り替わる分岐点などについて話を聞いた。

–オールフラッシュのストレージベンダーとして13年前(2009年)にPure Storageを創業しました。これまでの取り組みと、現在のストレージ業界をどう見ていますか。

 ストレージ(の記録媒体)がディスクからフラッシュベースになることは間違いない。問題は「いつ」だ。

 パフォーマンスが重要なワークロードからフラッシュに変わっていくだろう。フラッシュはパフォーマンスに優れるからだ。アーカイブ性の強いワークロードやセカンダリーのワークロードは、いまだにコールドデータを保存する巨大なディスクストレージが中心であり、フラッシュベースになるには経済性が重要になる。

 「ディスクは安価」といわれるが、実は長期的なTCO(総所有コスト)で見ると、(ディスクとフラッシュの比較は)既に対等なレベルだ。ディスクは消費電力がディスクそのもののコストよりも高いし、数が必要なので占有面積もフラッシュより増える。もちろん、冷却コストもフラッシュより高い。さらに、障害発生率が高くライフスパンも短いし、人手がかかる。頻繁にリプレースが起こるので環境にも良くない。

 1970年から2010~2012年頃までディスクは、コストとキャパシティーの点で直線的に改善していった。だが、その後はそのような直線を描けていない。改善の速度が鈍化したテクノロジーになった。

 その間にフラッシュがアグレッシブな改善サイクルで進化してきた。コンポーネント不足により価格が下がらない時期もあったが、長期的な傾向としては価格が少しずつ下がり、キャパシティーは改善している。

 われわれはフラッシュストレージの高密度化を進めており、ディスクのように回転数を上げるのとは異なるアプローチで性能を改善できる。4年もすれば購入価格がほとんど同じになり、TCOでの優位性も相まってディスクとフラッシュの差が開き始めるだろう。

–Pure Storageは設定から運用までのシンプルさにフォーカスしていますが、その背景にはColgrove氏さんの信念があると聞いています。

 シンプルさは重要だ。特にテクノロジー業界では、シンプルさが求められている。

 私の息子は先日、車の免許を取得したが、私の車で練習した時にライトスイッチ、ワイパー、パーキングブレーキなどの制御を知る必要がなかった。ハイビームを含めて運転操作が自動化されており、ドライバーが必要としている時に車両側がやってくれるからだ。雨が降ればワイパーが作動し、雨が強くなればワイパーの動きもそれに合わせる。雨が止めばワイパーも動作を止める。

 テクノロジーもこうあるべきだ。そのためには多少のコストが必要だし、完璧な最適化は難しいかもしれないが……。エンタープライズ向けのテクノロジーにおいて、シンプルさ、機能と性能は、トレードオフの関係にある。だが、そのトレードオフを解消することが、Pure Storageの目標だ。

 お湯を使いたい時に、人々は配水管がどのようになっているのかを考えることなく、スイッチを入れて蛇口をひねればお湯が出る。必要なら温度を調整する。これをテクノロジーで実現したい。お湯を出すための仕組みを顧客が知る必要はない。顧客がテクノロジーを使いこなすための障害や問題は、顧客側の問題ではなく、われわれが解決すべき問題だ。

–トレードオフのないシンプルなストレージという点で、どのぐらい実現できていると評価しますか。

 一般的に、製品は機能が少ないほど簡単でシンプルさを実現できる。われわれは機能や特徴を加えながらシンプルにするという難しい取り組みを続けてきた。シンプルさという点で、前の製品よりも劣らないようにしながら、機能面で優れた製品を提供することを常に考えている。

 例として、われわれのフラッシュアレイが搭載する「SafeModeスナップショット」を紹介したい。これは、ランサムウェアから顧客を保護する機能だが、SafeModeスナップショットを最初に提供した時、顧客はこの機能を自分たちで有効にして設定する必要があった。

 われわれはその後、ソフトウェア経由で、デフォルトでオンになるよう変更した。全ての顧客がランサムウェアから保護されるようにし、不要な場合は顧客がオフにできるようにする。SafeModeスナップショットが動き、顧客は何もしなくてもランサムウェアから保護される。これが、シンプルにするということだ。正しい方法で機能をデフォルトにすること、多くの選択肢を用意することだ。オン/オフを難しくすることは、シンプルさに反する。

 私はエンジニアで、あれこれいじったり調整したりするのが大好きだ。この誘惑に逆らって、シンプルさを大事にしている(笑)。

–コンピューターの世界では、量子コンピューターの開発が進んでいます。その点からストレージの将来をどう見ていますか。

 フラッシュはまだ新しく、進化中の技術で、当面はフラッシュに代わる新しい技術が登場しないと見ている。DNAストレージやガラスを利用したものなど、主としてアーカイブ分野で研究が進んでいるが、利用できるのは先のことだろう。「Intel Optane」などの技術もあるが、これらはDRAMだ。

 量子コンピューターは、暗号解読など一部の問題を瞬時に解決できるが、われわれが日常でしていることの多くは、影響を受けないと見ている。今後どのように発展していくのかを見ていきたい。

–Pure Storageは、10年後にどのような企業になっているのでしょうか。

 ストレージ以外のテクノロジーも手がけているだろう。それが何かは、現時点では分からないが……。

 それでも、シンプルでアクセスしやすい技術を顧客に届けるというわれわれのフォーカスは変わっていないだろう。恐らく企業、政府、大学などに提供するBtoBのビジネスを続けているだろうが、もし一般消費者に提供するBtoCのビジネスに拡大するのであれば、企業を買収することになるだろう。そして、シンプルさ、アクセスしやすさという同じバリューを一般消費者に届ける企業になる。

 「Evergreen」(Pure Storageのサブスクリプションサービス)は、われわれの最新のモジュールを無停止で利用できる所有モデルであり、数年で製品の買い替えを強いる既存ストレージベンダーのビジネスモデルが崩壊した。われわれのコアバリューは、ストレージや特定製品へのフォーカスというより、革新的なサービスや優れた技術をあらゆる人々が簡単に利用できるようにすることだ。これは10年後も変わらないと信じている。

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