規約管理をワンストップで–リクルートと弁護士ドットコムが「termhub」で目指すもの
今回は「規約管理をワンストップで–リクルートと弁護士ドットコムが「termhub」で目指すもの」についてご紹介します。
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弁護士ドットコムとリクルートは2022年6月、「termhub(タームハブ)」の共同開発・実証実験を目的に業務提携契約を締結したことを発表した。2022年10月に実証実験を開始する予定だ。リクルートは1年程度の検証を終えて、事業化を目指すと説明した。
termhubは利用規約や利用者の同意情報を一元管理し、法務部門の負担軽減や、利用者との関係性構築に寄与するSaaSソリューションである。SaaSやアプリケーションの初回利用時に利用契約書の類が示され、同意を求められた経験を持つ人は少なくないだろう。だが、利用規約は企業側の事情や社会変化に応じて、変更を加えるのが通例だ。
一般的な利用規約はベースとなるドキュメントを法務部門が作成し、事業部門の技術者がHTMLなどに当てはめていくが、その際の人為的ミスを避けるのは難しい。加えてコピー&ペースト操作では規約の版数管理もおぼつかないだろう。また、規約更新時に改めて利用者に同意を求めることも可能だが、利用者が同意した利用規約の版数を管理・確認するのは煩雑である。
そこでtermhubは、規約情報の作成や更新、承認を管理する「規約管理CMS」と、利用者の同意情報を格納する「同意管理DB」を用意し、両者を企業のサービスサイトとAPI接続して、各種管理を行う。利用者が同意した利用規約の版数と同意日時をひも付け、データベース(DB)で管理することで、規約管理の負担を軽減する。
termhub開発の背景には、リクルートの新規事業提案制度「Ring(リング)」が存在する。1982年に同制度の母体となる「RING」を開始し、これまで「ゼクシィ」「R25」「スタディサプリ」などの事業を生み出してきた。
基本的には社内公募だが、同社従業員とチームを組むことで社外の人間も参加可能。毎年3月から募集を開始し、6月上旬から一次審査を開始する。通過したアイデアはブラッシュアップを経て二次審査に進み、翌年2月の最終審査でグランプリが決定される。
毎回の応募件数は約1000件に及び、同社従業員数の1万7327人(2022年4月1日時点)を鑑みれば、狭き門なのは明白だ。当然ながら収益化までを考慮した事業提案のため判定は厳しく、事業化率は0.6%程度。グランプリは、毎年出すことが必須でないため、出ない年もある。ただし、準グランプリ止まりでも事業化の可能性は残しているという。
termhubをRingのタイムラインに当てはめると、2020年6月に一次審査、同年9月から12月まで二次審査、2021年4月から事業化の検証を開始した。
termhubを起案した背景について、リクルート 新規事業開発室 termhub開発担当者の篠原孝弘氏は、「Ringは社会課題・社会変化を捉えたビジネス化のアイデアが多いものの、われわれが着目したのは規約。各ウェブサービスやアプリケーション利用時に提示する規約は、正しく管理されていないのが現状」と語る。
2022年4月に施行された個人情報保護法改正(個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律)は、利用者の権利保護強化や事業者の債務、法令違反時の罰則強化が盛り込まれ、企業と利用者の関係性が大きく変化した。端的に述べれば、企業は利用者に対して誠実に向き合うことが求められる。
篠原氏によると、「社会課題は大げさだが、一つの課題を解決できるのでは」と思案したのがきっかけだという。当初は利用規約以外のデータを含めて管理するアイデアも盛り込んでいたtermhubだが、各企業の法務担当者に意見を求めつつ、Ringのブラッシュアップ期間を経て、現在の利用規約や同意情報の管理業務支援に主眼を「定めていった」(篠原氏)
前述の通りtermhubは、リクルートと弁護士ドットコムによる共同開発である。リクルートにおける法務系サービスは新領域のため、リーガルテック領域で実績を持つ弁護士ドットコムに白羽の矢が立った。