オラクルがクラウド時代に企業へアピールするアプリケーションの姿

今回は「オラクルがクラウド時代に企業へアピールするアプリケーションの姿」についてご紹介します。

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 Oracleは、米国時間10月18~20日にネバダ州ラスベガスで、同社最大の年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2022」を開催した。日本オラクルが11月14日に同イベントのメディア向け報告会を実施し、特にアプリケーション領域では、クラウド時代に臨む同社のスタンスと今後の潮流を示したとアピールした。

 同社の年次カンファレンスは、長らくカリフォルニア州サンフランシスコの中心街を会場として、「Oracle OpenWorld」の名称で実施されてきた。その名称を「CloudWorld」に変え、会場もITベンダーのイベントではおなじみのラスベガスに変更したことは、同社がクラウド時代に即した企業に文字通り“変身”する様を世界中に示すためでもあったようだ。

 企業のクラウド採用が徐々に本格化した2010年代の中盤以降、同社がOpenWorldで数多く打ち出していたのは、IaaSの後発としてIaaS大手のAmazon Web Services(AWS)に向けた価格や性能、安定性、セキュリティなどにおける対抗策の数々だった。

 現在でもIaaS市場の上位はAWSやMicrosoft、Google Cloudらが占め、OracleのIaaSは各社に続く立ち位置にある。ただ、「Oracle Database」ユーザーなどの大企業顧客のIaaS利用が増え、大企業顧客の獲得を狙う新興SaaS勢の中にもOracleのIaaSを事業基盤に採用するところが出ているなど、上位勢に追従している。

 装いを新たにした今回のCloudWorldでも同社は、OracleのITインフラのフットプリント拡大を目指す「Oracle Alloy」などを発表したが、報告会で日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏は、「不確実性が高まる時代へ顧客が対応していくためのアプリケーションを提供し、各種業界が抱える課題に対処するエコシステムでもって顧客の成功を支えるというメッセージを打ち出せた」と述べる。そして、NVIDIAとの新たな協業による人工知能(AI)の利用拡大など、「5年先を見据えたOracleの新しいケイパビリティーを示すことができたのではないか」と話した。

 その背景を振り返ると、Oracleは2000年代にPeopleSoftやSiebelといった数々のビジネスアプリケーションベンダーを買収し、これらを「Fusion Applications」として再編しつつ、2010年代にSaaS化のためのコードレベルで再開発した経緯がある。Oracleのクラウドサービスとしては、SaaSが先にあり、後からIaaSが展開された。他方で、大手企業の顧客の動きは、先にIaaS化があり、ここ1~2年でオンプレミスのパッケージソフトからSaaSへという流れが出てきている。結果として、2022年のこのタイミングで、Oracleが十数年を費やしてきたクラウド施策と顧客企業のクラウドへの取り組みがようやくリンクし始めたと言えるだろう。

 Oracleがクラウドアプリケーション領域で長らく手掛けてきたことには、ソースコードレベルの再開発以外に、アプリケーションごとにサイロ化してしまいがちなビジネスデータの一元化やAI・機械学習を利用したアナリティクスと予測の機能などがある。今回のCloudWorldでは、そうした成果の1つとして「Oracle B2B Commerce」を発表した。

 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部の三谷英介氏によると、統合基幹業務システム(ERP)のクラウドサービス「Oracle Cloud ERP」は数万社が利用しており、Oracle B2B Commerceでは、Oracle Cloud ERPを介して取引先やサービスプロバイダーと直接結ばれ、システムやプロセス、データなどを統合することなく、決済などのシームレスな取り引きを可能にするという。

 従来型のERPのほとんどは企業内利用に閉じ、取引先など外部とは、何らかの仕組みを必要に応じて用意し接続しなければならない。当然ながら企業のビジネスは、取引相手が居て成立し、取引プロセスは社内外をつなぐものになっている。それがITシステムとしては組織ごとに異なり、システム単体としては社内外をつなぐ取引プロセスがあまり深くは考慮されてこなかった。

 善浪氏は、先行きが不透明な時代にあっては業務プロセスのさらなる自動化、効率化が必要ながら、外部の取引相手が居るビジネスプロセスにおいて自動化や効率化は、自組織では完結しないと指摘する。そのためにOracle B2B Commerceを開発したという。

 この他にもサプライチェーン管理(SCM)では、近年の企業に要求されるESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みとその情報開示に必要なデータの利用、報告書作成支援といった機能を加えた。人的資源管理(HCM)領域では、人事向け機能としてダイバーシティー(多様性)や給与・福利厚生、教育研修などに関する洞察を提供する「Oracle Fusion HCM Analytics」をリリースした。顧客体験(CX)の領域では、営業・マーケティングにERPやSCM、HCMなどのデータを必要に応じて連携され、顧客満足度などを向上させるといったビジネス施策を打つための機能を提供するとしている。

 また、「Applications Platform」と呼ぶ同社のクラウドアプリケーションの機能をユーザーが必要に応じて拡張できるとする開発環境も発表して見せた。これは、同社が標準化したアプリケーション開発手法の「Redwood Design」をベースにしているものの、アプリケーションの画面デザインやツールといった各種のユーザーインターフェースをユーザーがローコードでカスタマイズできる要素を提供するものになるという。

 これについて善浪氏は、業務効率化などの観点からこれまでアプリケーションの標準機能をなるべく活用するFit to Standardのアプローチが推奨されてきたものの、「(企業固有の業務要件などに対応する)ラストワンマイルにおいて、ユーザーが必要に応じて機能を実装できるようになる」と説明。三谷氏は、「Oracleの開発はオープンテクノロジーを掲げており、オープンな形で追加開発ができるようになる」とした。

 こうしたOracleのクラウド展開は、後発のIaaS領域では先行するAWS、Microsoft、Google Cloudに追従しながらも、アプリケーション領域では統合化、標準化を推進しつつも顧客要件への柔軟な対応も示す。善浪氏は、「Oracleアプリケーションは、顧客が成功するための取り組みであり、新機能の8割は顧客の声を基に開発している。先週も開発部隊が来日して日本の顧客の声を聞いて今後の開発方針を確認した。12月には幹部が来日する予定だ」と述べ、Oracleがソフトウェア企業からサービス企業に姿を変えてきていることをアピールしている。

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