富士通が新中期経営計画を発表–今度こそ完遂なるか

今回は「富士通が新中期経営計画を発表–今度こそ完遂なるか」についてご紹介します。

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 富士通は5月24日、新たな中期経営計画を発表した。目標最終年度の2025年度(2026年3月期)に、売上収益4兆2000億円、調整後営業利益5000億円、調整後営業利益率12.0%を目指す。

 2022年度連結業績は、売上収益が3兆7137億円、調整後営業利益が3208億円、調整後営業利益率が8.6%であり、その点からも意欲的な目標であることが分かる。しかも、同社が発表している2023年度の業績見通しによると、新たな中期経営計画の初年度の調整後営業利益は3400億円で、その通りに着地したとすれば、残り2年で約1.5倍にまで拡大させなくてはならない。

 2022年度を最終年度とした前回の中期経営計画では、営業利益で過去最高益を達成したものの、指標に掲げていたテクノロジーソリューションの売上収益や営業利益率は未達。だった。振り返ると、今回に限らず、富士通の中期経営計画は長年にわたり達成した実績がない。そのため、今回の意欲的な目標に対しても懐疑的な見方があるのも確かだ。

 だが、代表取締役社長 CEO/CDXO(最高経営およびデジタルトランスフォーメーション責任者)の時田隆仁氏は、この計画の達成に自信を見せる。「2022年度の過去最高益達成からも分かるように、この3年間で収益性が確実に向上している。事業や組織体制、人事制度、社内システム、従業員のマインド、企業文化まで大きく変えることができた。新たな中期経営計画でもさらなる変革を進め、結果を出せる準備が整っている」とする。これまでの計画未達とは別に、企業体質の改善が進んでいることを強調した。

 新たな中期経営計画の中で、注目しておきたいポイントが幾つかある。1つ目は、事業セグメント変更で新カテゴリーとして作られた「サービスソリューション」だ。これまで「テクノロジーソリューション」と呼んでいたカテゴリーを、サービスを中心とした「サービスソリューション」と、ハードウェアの販売、保守などの「ハードウェアソリューション」に分類。成長領域とする「サービスソリューション」への投資姿勢を明確化した。

 発表によると、2025年度のサービスソリューションの売上収益では2兆4000億円を計画する。全社売上収益の57%を占め、2022年度実績の1兆9842億円からの年平均成長率6.5%を見込む。また、調整後営業利益の計画を2022年度の1629億円の2.2倍になる3600億円とし、調整後営業利益率も2022年度の8.2%から15.0%にまで高める。これらの計画数値からも、サービスソリューションが新中期経営計画における成長エンジンであることが分かるだろう。

 取締役執行役員 SEVP/CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏は、「売上収益、利益とも、全社の成長を支えるのがサービスソリューションだ」と言い切る。サービスソリューションの内訳を見ると、富士通の成長戦略がより明確になる。「グローバルソリューション」「リージョンズ(Japan)」「リージョンズ(海外)」の3つに分けられるが、それぞれに事業戦略が異なる。

 グローバルソリューションは、2025年度の売上収益6800億円、年平均成長率13.8%と高成長を見込む。営業利益では550億円を見込み、営業利益率では2022年度の1%から2025年度に10%へと一気に引き上げる。磯部氏は、「グローバルソリューションは、サービスビジネスの成長ドライバーであり、事業ポートフォリオ変革の要」と位置付けながら、「『Fujitsu Uvance』を中心とした価値提供型ビジネスの展開により、さらなる拡大を見込む。足元では先行投資フェーズだが、その後の展開でビジネスを大きく広げられる」との見通しを示す。

 一方、売上規模が最も大きいリージョンズ(Japan)は、国内の強い顧客基盤を生かし、さらなる収益性向上を追求する。2025年度の売上収益1兆4500億円、年平均成長率6.7%としている。営業利益では2800億円を計画し、営業利益率は2022年度の12.4%の高水準をさらに引き上げて19.3%を目指す。「日本のデジタル化、モダナイゼーションをサポートする役割を担う。健全なマージン率のビジネスを着実に拡大させることに加えて、デリバリーの高度化を追求することで、採算性向上を持続的に実現することを目指す」(磯部氏)

 リージョンズ(海外)は、前記の2つのカテゴリーとは異なり、ビジネス構造の変革フェーズにある。2025年度の売上収益は6000億円を目指すが、2022年度実績の5917億円に比べ3年後の計画は微増の範囲だ。また、調整後営業利益を2022年度の103億円から200億円に倍増させるが、調整後営業利益率では2022年度の1%から3%への改善に過ぎない。まさにテコ入れが必要な状況だ。磯部氏は「グローバル共通戦略によるポートフォリオ転換を実現し、健全な成長の起点をしっかりと作っていく」と述べる。

 こうした事業セグメントの変更により、サービスソリューションに対する成長戦略が明確化され、投資領域も分かりやすくなったといえる。そして、サービスソリューションの成長が富士通の中期経営計画の成否を左右することになるのも明白だ。

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