オルツ、独自LLMを基盤にした新サービスを発表–AIクローンを人事採用やM&Aに展開
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オルツは、AIを活用した自動オペレーションシステム「alt Polloq(オルツ ポロック)」をはじめ、採用人事やM&A(合併・買収)に関する新サービスを発表した。記者発表会には代表取締役の米倉千貴氏が登壇し、実演を交えながら新サービスの紹介を行った。
オルツは2014年11月に設立し、独自の大規模言語モデル(LLM)である「LHTM-2」や、AIクローン技術を活用したデジタルクローン(パーソナルAI)「P.A.I」の開発と実用化を行う。ほかにも、自動議事録ツール「AI GIZIROKU」などを提供し、「人の非生産的労働からの解放」を目指しているという。
LHTM-2は、OpenAIが提供する「GPT-3」などと同水準のパラメーター数で構成されており、機械翻訳や自動要約、テキスト生成、対話など、さまざまな用途に利用できる。また、LHTM-2に個人のライフログを入力し、個人の思考を再現する形で対話を行う実験を行い、実際に当該個人に非常に類似した言語活動を行うモデルを開発した。
発表会の実演では、米倉氏のパーソナルAI(デジタルクローン)に、「皆さんに日本語・英語・中国語であいさつして」や「オルツの企業紹介を手短にしてみてください」と指示をすると、パーソナルAIが指示に従って実行していた。
このLHTM-2を基盤にした自動オペレーションシステムが、alt Polloqになる。同システムでは、ユーザーによるキーボード操作などの行動を学習・分析し、それに基づいて自律的にタスクを実行する。これにより、日常業務の自動化と効率化を実現できるとしている。
同システムは、OSと「Google Chrome」やEメール、「Slack」などのソフトウェアの間に位置付く存在だという。ユーザーの動作や状況を判断してユーザーの代行エージェントとなり、OSとソフトウェアを必要なタイミングでつなぐ。さらに、LLM自体が状況に応じて自らプロンプトを生成し、PCをユーザーに代わって操作できる。
ユーザーがキーボードや音声で特定の操作を入力すると、alt Polloqが内容を解析し、必要なアクションを自動で実行する。例えば、「今日の予定を教えてくれる?」といった質問への回答や、「ディスプレイをダークモードにしてくれますか」といったOSレベルでしか動かせない指示もできる。ほかにも、「今日のイベント参加者のリストを確認して、参加のお礼とSlackの招待URLをメールで送信してくれますか」という複数の操作が必要な指示も実行する。
継続的なコミュニケーションの実行も可能で、「Slackに届いたメッセージに適当に返信しておいて」という指示を継続して実行する傍らで、「かわいい犬の絵を描いてみて」という指示にも同時並行で従う。
次に、デジタルクローンを利用した新サービス「CloneHR」と「Clone M&A」を紹介した。LHTM-2を活用した人材マッチングシステムのCloneHRは、求人側の企業と求職側のユーザーがそれぞれのデジタルクローンを生成し、クローン同士の仮想対話やAIエージェントとのコミュニケーションによるマッチングにより、情報確認や面接・面談工程、クローン同士の対話を実現するという。
一般的な採用フローでは、採用人事が企業にマッチしそうな人材を探し出し、情報をデータベースに登録し、スカウトメールを送信する。候補者から応募があれば、書類選考を行い、日程調節をした後に一次面接を行う。そして面接結果を判断し、通過する候補者に対して二次面接を実行して最終判断を下すという計9つのプロセスを数人で行っている。
CloneHRでは、人材を探すところから一次面接の結果までを担う。利用するAIは2つあり、人材の探索から書類面接までをAI-HRを用い、一次面接から面接結果の判断までをクローン面接官が行うという。
AI-HRは、自動でウェブ上から企業に合う人材を検索し、人材のデータベースを生成。その人材に最適化されたスカウトメールを送り、面接の依頼があった場合はクローン面接官と面接を行う。さらに面接結果をAIが自動で判断し、担当者がチェックして通過させるというフローができる。
CloneHRは24時間の利用ができるため、打ち合わせの時間を設ける必要がない。時間制限がないため、より定性的なやりとりを踏まえた相性を調べることができ、採用人事の複雑なニーズに応えられるという。また、デジタルクローンがコミュニケーションを行うため、報酬面や条件面などの詳細なやりとりができるなど、人間が行う対話以上の情報交換ができるのではないかと期待しているという。
AI-HRをオルツで利用したところ、月間の人事業務を70%以上削減した。また、国外のエンジニアに対してもAIにより、英語を使ったアプローチができたという。
米倉氏は、採用人事のAI化が進むことで、採用人事に従事していた人間はAIのメンテナンスが主な仕事になるという。「まだAIは人間並みの感情を理解していないため、あくまで人間の感情を模倣はするが、理解していないという状況がある。現状では、AIが苦手な感情理解に特化して、人間はAIにそれを教え込む必要がある。ただ、AIはあと3年すれば人間には判別できないレベルで感情表現を実現してしまうという風に、われわれは研究開発を進めている」と説明した。