日々の業務に追われるIT部門から脱却せよ–IT関連業務の徹底的な自動化
今回は「日々の業務に追われるIT部門から脱却せよ–IT関連業務の徹底的な自動化」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、DXで直面するカベを突破せよ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、果たして成果を上げているのであろうか。PwCコンサルティングが2024年12月に発表した「2024年DX意識調査‐ITモダナイゼーション編‐」の分析結果からは、「DXの成果が期待通り、もしくはそれ以上」と回答した企業は41%にとどまることが分かった。
つまり、いまだ半数以上の企業は十分な成果を得られていないのが現状だ。今回、最新調査の結果も活用しながら、その原因を探り、DXを実施する上で直面する壁や陥りがちな状況に焦点を当て、読者の皆さまに現状を打破するためのヒントを提供することを目指して、本連載を再開する。
筆者らがこれまで支援してきたクライアントの状況を見ると、日本企業のIT部門の方々は、新しい技術や知識を習得したくても、その時間を確保できない状況に陥っているケースが少なくない。前述の調査でも、日本企業はDXを進めようとするものの、「日々の業務に忙殺されて時間がとれない」という実態が浮き彫りになった。
なぜそれほどまでに、日本のIT部門は忙しいのか。忙しさからどうすれば抜け出せるのか、考察していく。
IT部門が日々忙しい理由は多岐にわたるが、システム運用における煩雑な管理業務や反復的なタスクが、その中心的な要因となっている。これらの作業は、手動で行うと人的リソースに大きな負担をかけるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも増大させる。そこで注目されるのが「自動化」である。自動化技術を活用することで、定型業務の効率化やミスの削減が進み、IT部門の担当者はより高度で戦略的な課題に専念できる環境が整う。以下では、具体例を交えながら詳しく解説する。
近年のシステム開発では、パブリッククラウド(以下、クラウド)の利用が主流になっている。クラウドは、従来のオンプレミスと異なり、新しい環境の構築やリソースの変更を、技術的には数分で実行できる。しかし、実態は開発者が環境の新規利用を申請しても、実際に提供されるまでに数週間以上かかることが珍しくない。
その理由を探ると、申請受付からパラメーターの確定、社内のセキュリティ基準との整合性チェック、設定確認と作業準備、構築、そして最後に、設計通りに設定されているかのテストといった手順があり、それぞれの手順に2~3日を要している。本来なら数分で提供可能であるものが、こうした手順を経ることで、途方もない時間を費やしてしまっているのが現状だ。
このような状況を打開するには、 インフラの構築や運用業務において手作業から脱却し、可能な限り自動化を推進することが必要である。具体的なステップとして、まずインフラの設定をソフトウェアのようにコード化(Infrastructure as Code化: IaC化)し、必要な設定をテンプレートとして準備する。この際、あらかじめ社内のセキュリティ基準や権限方針に順じた設定をベーステンプレートとして用意し、テストを自動化することで、社内規程に準拠した環境を早期に、かつ人手を介さず提供することが可能になる。事例としてデジタル庁では、「ガバメントクラウド」の取り組みの一環として、環境自動提供テンプレート(IaCテンプレート)を用意し、短納期でのクラウド環境の提供を実現している。ぜひ参考にしていただきたい。
次のステップとしては、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)ツールの活用が考えられる。CI/CDは、アプリケーション開発では身近になりつつあるが、インフラ領域においてもIaC化することでCI/CDのスタイルを取り入れ、アプリケーションと同様に環境変更時にテストが自動的に実施され、品質が担保されたタイミングで自動的にプロビジョニングされる仕組みを実現できる。CI/CDにより、従来のシステム更新時に行われていた影響範囲の確認からテストの実行、本番環境へのリリースまでの多くの手作業を減らすことが可能だ。
このようにIaC化とCI/CDの活用により、環境構築や運用業務の自動化だけでなく、リードタイムの大幅な短縮が見込める。また、自動化することで1人当たりの対応可能な作業件数が増え、将来に新規利用や変更の申請が増えても、最小限の人員で対応が可能になる。