日本発スタートアップがAWSを選んだ理由

今回は「日本発スタートアップがAWSを選んだ理由」についてご紹介します。

関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は5月12日、「AWS Summit Online Japan」の基調講演に登壇したRABO 代表取締役社長の伊豫愉芸子氏とStudio Ousia Chief scientistの山田育矢氏を迎えて、両社の事業概要とAWSの役割を紹介する報道関係者向けのオンライン説明会を開催した。

 RABOは「世界中の猫と飼い主が1秒でも長く一緒にいられるように、猫の生活をテクノロジーで見守る」と銘打った「Catlog」(キャットログ)というサービスを提供している。伊豫氏はCatlogを猫専用のIoTサービスだと紹介し、その提供背景として留守宅にカメラを仕掛けるなどの方法では把握できないような「人が見ることのできない猫の時間」を同氏が大学/大学院で研究に従事していた動物行動学(バイオロギング)の手法を応用してデータ化し、些細な体調変化を察知したり、大量に蓄積されたデータを踏まえ、同じような状況にある他の猫と比較することで有益な提案をしたりする。

 現在提供しているサービスは、猫の首輪につけたセンサーから得られたデータを機械学習で解析しているが、今夏リリース予定の「Catlog_Board」では、猫用トイレの下にセンサーボードを敷くことで体重と尿量の重量データやトイレ回数/滞在時間といったデータも収集可能になり、首輪のセンサーから得られる行動データと組み合わせることで「総合的な健康管理が可能になる」という。

 同社のサービスは、コンテナー実行環境「AWS Fargate」やリレーショナルデータベースサービス「Amazon Aurora」を使って実装されている。同氏はAWSの選定理由やメリットについて、「使い慣れた技術環境での高速開発」「専任者が不在でも管理コストが低く、リソースを開発に集中できる」「スケールに応じて選択できる豊富なサービス群」を挙げている。

 Studio Ousiaは、言葉を理解する人工知能(AI)の開発に取り組んでおり、どんな質問にも答えるAIを開発している。山田氏は「コンピューターが言葉を理解するようになると何ができるようになるのか」という問いに対し、その一例として「コンピューターが人間の任意の質問に回答する“質問応答”というタスク」を挙げた。

 さらに、「コンピューターがテキストを読んで理解し、知識を蓄積することで、オンラインの“百科事典”であるWikipediaなどの巨大なデータベースの内容を学習してさまざまな質問に回答できるAIが実現できる」という。同社が独自に開発した言語AIモデル「LUKE」はWikipediaなどの知識を効率良く学習できるように工夫された言語モデルで、実際に「質問応答(SQuAD、ReCoRDデータセット)」「固有表現抽出(CoNLL-2003データセット)」「関係抽出(TACREDデータセット)」「型分類(Open Entityデータセット)」といった自然言語処理の複数の重要なタスクにおいて「世界最高性能を達成」したという。

 また、ディープラーニングを用いた自然言語処理の世界標準のツールである「Huggingface Transformers」がLUKEを公式にサポートしており、これは「日本発モデルとして初の事例」(山田氏)だということからも、同社の成果が国際的に評価されていることがうかがえる。

 別の成果としては、Googleで検索された質問への解答の正解率を競うコンペティションである「NeurIPS EfficientQA 2020」において、同社は無制限トラックでMicrosoft、Facebookに次ぐ3位にランクされている。単純に順位としてトップ3に入ったことが凄いというだけではなく、同氏は大規模な演算リソースを確保可能な大企業に匹敵する成果を上げることの困難さを指摘している。

 同氏は、「こうしたシステムの開発においては“AIを訓練する”ための計算資源の量が性能に大きく影響する」と指摘し、「小さなスタートアップが世界最先端の開発を行うためには、AWSのような必要なときに必要な分だけ使えるような計算資源の活用が非常に重要な課題となっている」と語った。

 同氏はAWSの活用について、「他の部分では割りと楽をして、強みであるAIモデルの開発に集中して取り組むことが可能になっている」とし、データの蓄積からデータ処理、AIモデル訓練などで「AWSのサービスをフル活用して研究開発を行っている」という。また、製品開発面では、元々独自に開発した製品をAWSが提供するフルマネージドサービス型の機械学習プラットフォーム「Amazon SageMaker」を使う形にリファクタリングしたところ、約40%のコードを削減できて保守性が大幅に向上したなどの成果も得られているという。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業開発部 本部長の畑浩史氏を交えてのパネルディスカッションと質疑応答では、RABOとStudio Ousiaの両社とも、AWSのサポートが充実している点を高く評価していた一方で、要望も「もっとコストが下がれば」という点で両社の意見が一致していた。日本のベンチャー/スタートアップに対する支援が米国などに比べて手薄だという指摘もある中、AWSのようなグローバルに活動する企業がスタートアップ支援に注力しているのは国内の起業家にとっては心強いだろう。

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