「誰にコンテンツを届けないか」–電通が進めるクッキーレス時代のデータ戦略
今回は「「誰にコンテンツを届けないか」–電通が進めるクッキーレス時代のデータ戦略」についてご紹介します。
関連ワード (マーケティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
電通は4月10日、同社のマーケティング施策を支えるデータ戦略について説明会を開催した。クッキー規制が進む中、同社は複数事業者が保有するデータをデータクリーンルームに集約し、ユーザーのプライバシーを担保するとともに、より効率的・効果的なマーケティング施策の展開に取り組んでいる。
電通グループにおける国内事業の戦略策定や、グループ各社の統括・支援を行うdentsu Japanでグロース・オフィサー/チーフデータオフィサーを務める松永久氏は、dentsu Japanが採るデータ戦略やデータクリーンルームの取り組みを紹介した。
これまでのデータ戦略では、(a)顧客企業のカスタマーデータプラットフォーム(CDP)、(b)電通グループ独自のデータマネジメントプラットフォーム(DMP)「People Driven DMP」、(c)データクリーンルームを連携させてきた(図1)。
「Google Chrome」におけるサードパーティークッキー廃止の動きに伴い、「ユーザープライバシーの保護」と「顧客企業のマーケティングニーズ」の両立が求められる中、dentsu Japanは会員データなどの顧客企業保有のデータ、テレビ視聴データなど電通保有のデータ、検索データなどプラットフォーマー保有のデータを連携したデータクリーンルームを構築し、マーケティング施策の継続的な改善活動を行っている(図2)。
データクリーンルームの利用により企業が求めることとして、顧客ID単位でのマーケティング施策がある。例えば、テレビ番組とデジタル広告を視聴して商品を購入した消費者にはメッセージの配信、双方を視聴したが購入には至らなかった消費者にはクーポンの配布を行うことなどが考えられる。その上で電通は、ID単位での施策に対して改善活動を行う。
電通グループは2016年からデータクリーンルームの利用を開始し、2023年には国内で1000件以上の案件を担当した。電通と電通デジタルは2022年8月、複数のデータクリーンルームでの分析・運用を一元管理するシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」を開発。同基盤により、利用者は一元的な分析が可能となる。
クッキー規制に伴い、従来のデータ戦略におけるPeople Driven DMPの役割は縮小している。こうした中、dentsu JapanはPeople Driven DMPをデータクリーンルームに組み込み、電通と電通デジタルが開発した統合マーケティングダッシュボード「MIERO(ミエロ)」で分析する構想を描いている(図3)。
電通 統括執行役員 ストラテジーの鈴木禎久氏は、同社のデータ戦略をマーケティング施策に転換する上での考え方を説明した。
鈴木氏は「顧客企業が求めるのは、マーケティングにおける投資対効果『mROI』の最大化。例えば5億円を投資して10億円の売り上げを得られても、投資額は5億円よりも4億円、売上額は10億円よりも11億円であることが求められる」とした上で「企業の製品・サービスを必要としない人、ウェブサイトを訪れない人、店舗に足を運ばない人には、予算を使わないことが必要となる」と顧客となり得る消費者を特定して投資する必要性を説いた。
鈴木氏は「ダブルファネルのような予算の使い方には無駄がある」という。ダブルファネルとは、消費者が商品の認知/理解から興味関心・比較検討を経て購入する「パーチェスファネル」、消費者が商品を継続購入してSNSで魅力を発信する「インフルエンスファネル」を組み合わせた手法を指す。
同氏は、ダブルファネルと対比させる形で「寸胴(ずんどう)型ファネル」を提唱(図4)。「親和性が低い人々に一度買ってもらったとしても、そこに投じたコストは長期的には無駄かもしれない。むしろブランドのロイヤル/ロイヤルになり得る人々になるべくアプローチする方が効率的にお金を使っているといえる。われわれは『なるべく寸胴型ファネルを目指そう』と話している」と述べた。