進まない組織カルチャーの変革–DX成熟度に見る組織カルチャー変革の実態
今回は「進まない組織カルチャーの変革–DX成熟度に見る組織カルチャー変革の実態」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
業務のデジタル化やDXの推進において、しばしば阻害要因となる企業の組織カルチャーの問題は、変革が依然として進んでおらず、多くの企業にとって根深い課題と言わざるを得ません。3年にわたる調査から遅々として進まない組織カルチャーの変革の実態を探り、その対応策を考察します。
ITRでは、DXの推進において組織カルチャーがその土台となると考えており、デジタル時代に適合した組織カルチャーを手に入れることの重要性を度々指摘してきました。デジタル化が高度に浸透すると、DXの本質的な意味にも変化が生じると考えられます。これまで、デジタル技術やデータは「手段」と位置付けられていましたが、今後は「前提」に変わります。すなわちDXの本質は「デジタル“で”企業を変革する」のではなく、「デジタル“に”適合した企業に丸ごと生まれ変わらせる」ことを意味します。
従って、働き方や社内の業務プロセス、意思決定や組織運営の方法、顧客との取引や接点、ビジネスモデルなど全てが、デジタルを前提として組み立てられている企業が今後の目指す姿といえます。そして、その姿を維持していくための土台としてデジタルに適合した組織カルチャーを手に入れることが求められるのです。
『両利きの組織をつくる』(加藤雅則ほか著、英治出版)では「『組織カルチャー』とは、企業理念や価値観・社風といった概念のことではない。具体的な『仕事のやり方』のことである。その組織で観察される特有の『行動パターン』であり、行動を規定している『組織規範』を反映しているものだ。『仕事の作法』とも言えよう」と述べています。
そこで、ITRではデジタル時代に適合した組織カルチャーを、「デジタルを前提とした人々の行動パターンとそれを規定する組織規範」と定義し、ビジネスモデル、取引・顧客接点、社内業務プロセス、働き方、意思決定・組織運営のあり方など全てが、デジタルを前提に組み立てられている企業を今後の目指す姿として提示しています。そして、その要件として(1)DXの本質と変革の必要性への理解、(2)創造的な活動の自由と支持、(3)ファクトに基づく意思決定、(4)人材の多様性と組織のトライブ化への対応、(5)個人の組織への貢献の可視化と正当な報奨、(6)リスクの許容と失敗からの学習の6つを挙げています(図1)。
まずは、国内企業のDX推進に向けた組織カルチャーの変革の進捗(しんちょく)状況を確認しておきましょう。ITRでは、『DX成熟度調査』を2019年から毎年6~7月に行い、従業員1000人以上の国内企業におけるDX推進や環境整備の進捗状況を定点観測しています。その中で、組織カルチャーについては、先述の6つの要件ごとに3つ、計18の設問を2021年から毎年投げかけ、回答をスコア化して0から5までの6段階で組織カルチャーのデジタル適合度を評価しています(図2)。
デジタル適合度は、全てレベル2から3の間に位置し、どの分野が特に低いという傾向は見いだせません。また、3年間のスコアはほとんど重なっており、2021年からわずかに高まってはいるものの、大きな変化は見られません。すなわち、国内企業における組織カルチャーのデジタル適合度は総じて低く、変革はほとんど進んでいないといえます。
デジタル時代に適合した組織カルチャーへの転換が必要であり、それが十分に進んでいないことが理解できたとしても、具体的に何が障害となっており、どこに注力して変革を推進すればよいかが分からないこともあるでしょう。そこで、2023年7月に実施した最新の調査から、先述の18の設問の回答を確認してみましょう(図3)。